Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

セカンドインタラクション株式会社の芳野真弥さんと,大学を面白くするためのアレコレをディスカッション

理系大学生や若手研究者対象のコミュニケーション講座やキャリアセミナーをお仕事にされている,セカンドインタラクション株式会社の芳野真弥さん @m_t_t_b にお会いして,大学でこんなことがでいたらいいなー,とか.こういうことをやろうと考える人が増えるといいなー,とか,そんな話をして盛り上がりました.

キッカケは,私が2011年度から前期木曜2限に開講している「大学基礎演習B『大学生としての学び方』」に芳野さんが興味を持たれたことでした.この科目で私は大学の「中の人」として大学生に,コミュニケーションスキルとか,伝わるメッセージの組み立て方とか,レポートの書き方とかを教えていて,あ,そうそう,実験ノートに何を書くかとかも教えています*1

一方,芳野さんは大学の「外の人」として,やはりプレゼンのやり方とか,コミュニケーション方法とか,キャリア設計なんかをアドバイスされています.芳野さんが興味をお持ちの領域と,私が興味を持ってる領域とが大きくオーバーラップしているのです.それで,はるばる相模原キャンパスまでお越し頂いたのでした.

確率を高めよう:どっちが正解なのかなんて誰にもわからないんだから

私たちは問題に直面したときに,「何が正解なのか」とか「どちらが正解なのか」という考え方からスタートしがちです.数値計算とか実験計画においてはこうした問題設定が求められますが,世の中には「どれも誤りとは言い切れない」とか「どちらも正解になる可能性がある」という場面もあります.

たとえば就職を探している大学生が,「どこに応募するのが『正解』なんでしょう?」とか「どの職業に就けば『正解』と言えるのでしょう?」といった相談をしてくることがあります.

それに対して芳野さんは「すべては確率の問題だ」とアドバイスされるそうです.様々な選択肢の中からどれを選んでも人生が上手く進んで行く「確率」がゼロっていうことはないし*2,その確率は様々なチャンスや努力,工夫によって変えられます.だから「成功か失敗か」とか「正解か誤りか」という考え方をするのではなく,「選択肢の中から,どれを選んだときに,上手く行く『確率』が高いのか」という考え方をしようというわけです.

この考え方はこの数年の私の考え方と似ています.次々とやって来る選択の場面において,常に最善を尽くして行くことが私の人生の進め方だからです.「最善を尽くす」というのは,望ましい方向に人生が進む「確率」を高める操作だとも言えます.

2013年1月以降の私の人生の方針→2013年の過ごし方:目標は設定しない(2013-01-01)

相手のアタマの中身のBefrore→After

「メッセージが伝わる」って,どんなことでしょうか?

「自分が説明したり訴えたりしたい何かがあって,その内容を相手が理解してくれること」って考えてる人がいますが,コレは間違いです.それは「伝わった」とは言いません.メッセージを受け取った人が何らかのアクションを起こしてくれたとき,初めて「伝わった!」と言えるのです.

コレ,私が大学基礎演習Bとか,キャンナビ対象のプレゼン講座なんかで何度も何度も何度も言い続けていることです.

「情報を正しく理解してもらうために歴史的経緯の詳細な説明からスタートして延々と説明を続けて途中で本筋の理解に不必要な参考情報なんかまで組み込んで果てしなく説明を続ける困ったヒト」ってのが小学校以来クラスに1人か2人いませんでしたか? ああいうのはダメなんです.そんなヒトのために何かアクションを起こそう,なんて言う気になれませんよねぇ.

芳野さんはメッセージを届けるとき「相手のアタマの中身のBefore→After」という考え方をされるそうです.メッセージを受け取る前の相手のアタマの中の状態が,メッセージを受け取ることによって別の状態に変わって,それがメッセージの送り手が望んでいた変化なら,メッセージが「伝わった」と考えるのです.

そういうことを大学で教える人って少数派

「確率で考える」や「Before→After」以外にも,大学生に知っていて欲しいアレコレ/実行して欲しいアレコレ,のハナシが続きました.大学の「外」の視点で大学生対象に活動されている芳野さんとディスカッションして,私自身は「とりあえず今の路線でOK」って結論に至ったので,これまでどおり大学基礎演習Bとかキャンナビとかで,役に立つアレコレを伝授して行くことにします.

おまけ:これもまたTwitterがつないだ縁

芳野真弥さん @m_t_t_b とも先にTwitterでつながって,それから実際に会ってみる,という流れでした.最近の私は,こういう順番が標準的になっています.

このブログを書いている人

*1:今年度は履修希望65名の中から抽選で28名を選びました.

*2:完全にゼロじゃないかもしれないけど.