Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

必修科目の成績評価はこんなふうにやってます

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通年科目の前期に0点を取っても逆転できる仕組みになっています

前期試験では配点20点の問題を6題出題しています.この中から好きな5題を選んで回答すればOK.さらに6題目に取り組んでもOK.コレが正答なら試験成績に加算します.加算して行って100点を超えてしまった場合には,前期試験得点100点ということにして*2,オーバーした点数を後期試験得点に加算します.

後期試験では配点20点の問題を8題出題しています.前期試験同様,この中から好きな5題を選んで回答すればOK.5題を超えて解答してもOK.正答なら通年試験成績に加算します.

通年成績は前期試験得点と後期試験得点との合計で評価します.2回の得点が合計して120点(平均60点)なら「可」,140点(平均70点)なら「良」,160点(平均80点)なら「優」です.前期も後期も全部の問題に取り組むと,最大で280点ぶんの問題に解答できるわけで,120/280 = 42.9 %の得点率で合格,160/280 = 57.1 %の得点率で優判定となります*3

前期試験で不調でも後期で大逆転できる

前期試験で0点でも,後期に120点取れば「可」で合格だし,160点取れば大逆転で「優」になります.毎年,前期得点が60点未満だった学生の中から,最終的に「優」評価で進級する学生がいます.

そういうやりかたをするのはなぜか

履修者のモチベーションを高めるためにこういうことをやっています.

2回の試験の合計得点だけで成績を評価する場合,前期も後期も100点ずつ出題して成績評価ウェイトを50:50に設定すると,前期に20点未満の得点となった瞬間に,単位取得不合格が確定してしまいます.

また,大学にすべりこんだものの,高校までのやり方が通用せず,調子が出て来るのが後期になってから,という学生も珍しくありません.せっかく後期から調子が出てきたのに,前期の低得点が足かせとなって最終評価にリミットが生じるっていうのはつまらないものです.

そんなことにならないよう,年間を通じて学習意欲を失わない方法をアレコレと考えた結果,このように再挑戦のチャンスあり,大逆転の可能性もあり,という仕組みにしてあるわけです.

そのやり方だと点数計算に問題が生じるんじゃないでしょうか?

「合計280点分を出題するっていうことは,その280点分が100 %になるわけだから,合格ラインは280点の60 %に相当する168点にしておかなかればダメなんじゃないでしょうか?」なんていうことを言ってくるヒトがいますが,それは考え方の問題です*4.この方式がダメなら,従来から行われている「ゲタを履かせる」行為のほとんどもダメになっちゃうからです*5

ソレがダメなら他の科目もダメでしょ?

「任意提出の課題を提出すればプラス10点」とか,「補講に出席すればプラス5点」とか,「出席点は毎回プラス1点」とか,「救済処置のレポートを出せばプラス20点」なんていう具合に,オプションの「プラス点」を用意してある科目は珍しくありません.テスト得点以外にそういう「プラス点」を与えてる科目では結局,獲得可能合計点が100点*6をオーバーしちゃってるわけです.私の科目もソレと同じなのです.100点を超えて得た得点は,他の科目で任意提出の課題だとか救済処置のレポートだとか出席点だとかで得られる点と同じ「プラス点」,と考えるわけです*7

「出席点」はありません

2回のテストの合計点だけで成績評価します.
出席していれば自動的に点数が加算されて行く「出席点」制度は,私の担当科目にはありません.なぜなら,出席することが学ぶことを保証しないからです.90分間寝ているかもしれないし,他の科目のレポートづくりに励んでいるかもしれないし,スマートフォンでチャットにいそしんでいるかもしれないからです.「休まずに出席していたのに単位をくれないなんて鬼畜ー」という主張をときどき耳にしますが,その程度で鬼畜だと言うのならいくらでも鬼畜と言えばいい鬼畜鬼畜鬼畜鬼畜ぅーーーー!!

「模擬問題+略解」を全員に配布しています

前期は6月下旬〜7月上旬に,後期は12月上旬〜下旬に,それぞれ,その年度の試験問題の「模擬問題」を略解付きで配布しています.「どんな問題がでるんですかー」系の質問にはコレで答えています.

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「過去問」をすべてオープンにしています

2009年度から現在までの試験問題,模擬問題,およびそれらの略解をダウンロードできる状態にしてあります.ダウンロードURLは全履修者に知らせてあります.今年度からはダウンロードURLのQRコードも配布しました.

例年の合格率 *8 *9

2010年度
履修84,前期(合格74/受験84),通年(合格84/受験84),100 %
2011年度
履修91,前期(合格80/受験89),通年(合格86/受験90),96 %
2012年度
履修94,前期(合格81/受験93),通年(合格80/受験93),86 %

「再試」はありません

試験で調子が出ず,合格ラインに到達できなかった学生に対して,2,000円の再試料金を大学に納めれば再チャレンジできる「再試験」制度がありますが,私は必修科目においてこの制度を採りいれていません.ダメなものはダメ.次の年に最初からやり直すのがスジというものです.そもそも,最大280点分の問題に取り組むチャンスがあって,模擬問題が配付されて,過去問がオープンになっているという状況で,さらに再試を行うっていうのはダメ! ダメダメダメダメったらダメ! ユトリ教育は高校まで!


採点は基準を決めて減点法

満点から減点して行って,後から部分点を加えて行くやりかたをしています.

  • 有効数字の桁ミスは1桁につき1点減点する.
  • 累乗の計算ミスは1桁につき1点減点する.
  • 計算問題最終桁のバラつきは減点しない*10
  • 語句説明はキーワードを決めておいて,足りない語句があると基準点数を減点する.*11
  • 計算問題は部分点を与える箇所を決めておいて,ソコまで到達している答案に基準点数を加点する.

採点は2回繰り返しています.

得点はお知らせしております

大学発行のメールアドレスからの問い合わせに限り,得点をお知らせしております.

注意

  • 以上は2013年度までのやり方です.2014年度以降にどうするかは未定です.このやり方を続けるつもりだけど.
  • 以上の成績評価方法については講義第1回目に説明してあります.成績評価方法は印刷して配布してあります.この記事によって初めて公開されるものではありません.

このブログを書いている人

www.tnojima.net

*1:イラスト→ http://www.irasutoya.com/2013/02/blog-post_12.html

*2:100点までしか入力できないシステムになってるので.

*3:合計200点を超える学生も出てくるわけですが,201点以上の得点はカットしています.べつにカットされたって問題ないでしょう?

*4:と,私は考えています.

*5:そもそもゲタを履かせる処理についてシラバスに書いてないんだったら,厳密には公開されている方法で成績評価してないわけでグレーですよねぇ?

*6:試験2回なら200点.

*7:というようなやりかたはダメだとのお達しが出た場合には方針または解釈を変えます.

*8:「通年」に記載した「受験」は後期試験の受験者数.前期に寝坊して後期試験だけ受験した学生がいたりして前期と人数が異なる場合あり.

*9:この3年間,難易度が同じくらいの問題を出していて,平均点は年々上がっているのですが,合格率は下がってます.原因不明.

*10:どこで丸め込んだのかで動くものだし.

*11:例えばAを求めて,Bを求めて,最後にAとBを合わせて解答とする,という問題で配点が20点の場合,Aまで求めてあれば部分点5点,という感じ.