Life + Chemistry

化学の講義録+大学を楽しく面白い学びの場に変える試みの記録 (北里大学・一般教育部・野島 高彦)

医療工学科の化学講義(7)原子軌道と分子の形

f:id:takahikonojima:20150602160221p:plain

キーワード

p軌道,px軌道,py軌道,pz軌道,π結合,s軌道,σ結合,sp混成軌道,sp2混成軌道,sp3混成軌道,原子軌道,古典的,混成軌道,電子雲,不確定性原理,量子論的

講義内容の要約

  • 電子の奇妙な振る舞い
  • ハイゼンベルクの不確定性原理
  • 古典的な考え方と量子論的な考えを比較してみる
  • s軌道とp軌道とそれらの混成軌道
  • 混成軌道から理解する5種類の分子の形:メタン,アンモニア,水,エチレン,アセチレン

講義内容解説プリント

今回の講義内容は教科書には記されていません.先週配布した以下のファイルに記載されています.

混成軌道の生成説明動画

関連トピック:原子軌道の考え方確立に貢献した人々

確認問題

分子の形と極性の関係

二重結合,三重結合ではσ結合だけで構成されているのはあるのですか?

第2周期までの元素ではσ結合だけで多重結合が構成されることはありません.第3周期以降になるとd軌道っていうのが出てきてコレがイロイロと面倒なことをしてくれて説明が複雑になります.

2sp3混成軌道はつながっていてメタンの8個の電子はその中を自由に飛び回るのでしょうか?

メタンの8個の電子は互いに区別することのできない粒子です.それらの電子が「だいたいこのへんによく見いだされる」という場所が決まっています.

単結合,二重結合,三重結合でそれぞれ結合距離が違うのはπ結合が原因ですか

そうです.2個の原子核を結びつける結合が増えれば距離が縮むのです.

2sp3になったり2sp2,2spになったりしますが,それはどこでわかりますか

結合の本数とか

「2sp」「2px」などの「2」にはどんな意味があるのですか?

K殻が1,L殻が2,M殻が3,以下続く

炭素Cはどうして最初から4つの均等な軌道をもたないのですか?

炭素原子の仕組みについて詳細に研究が行われた結果,エネルギーレベルの異なる2種類の軌道が存在することがわかったのです.誰かが意図してそのように設計したわけではないのです.

エチレンのCとHの成す角は110°と高校で教わったんですが

sp2混成軌道による共有結合が3本とも等価なとき,角度は120°になります.等価でなくなった時には角度が変わります.

部屋割は自分でできるようにすべきですか?

できなくておk

テトラポットは分子の形からつくられたのですか

関係ありません

今日紹介された天才化学者たちがもし生まれていなかったら今の世の中はどうなっていると思いますか?

歴史にifは無い,なんですが,結局別の誰かが別のタイミングで同じ結論にいたっていたことでしょう.

梅雨の季節ですね.雨が降る前とかって独特なニオイがしますが,あれは化学的に説明できるものですか.何かの反応ですか.

アレは湿度が高くなると放線菌が放出するゲオスミンという有機化合物のニオイです.

化学に関する本で先生のおすすめなどありましたら教えてください

以下の3冊をオススメします.

世界史を変えた薬 (講談社現代新書)

世界史を変えた薬 (講談社現代新書)

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

  • 作者: ジェイ・バーレサン,ペニー・ルクーター,小林力
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/11/24
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 128回
  • この商品を含むブログ (13件) を見る
化学の歴史 (ちくま学芸文庫)

化学の歴史 (ちくま学芸文庫)

ラプラスの悪魔とは何ですか?

量子論以前の物理学で,もしもこの世界の全ての物体の位置と運動量を知ることができたとした場合に,これから先の任意の時間における全ての物体の位置と運動量を知ることができることになって,
「この世界の全ての物体の位置と運動量を知ることのできる知性」があれば,この世界の未来を知ることができるということになって,そういう知性のことを「ラプラスの悪魔」と呼ぶのです.実際にはそういう知性が存在したとしても,不確定性原理によって「この世界の全ての物体の位置と運動量」は知ることができないので,未来は計算できません.

量子論とはどのような考え方か

超おおざっぱに言ってニュートン力学では説明できないものごとを説明する考え方.一言では説明できません.

f:id:takahikonojima:20160610192352p:plain

そうです.

出席者数推移

(1)91→(2)90→(3)86→(4)85→(5)83→(6)83→(7)84

次回予告と予習

「モルと化学反応式」を学びます.教科書の49ページから64ページを読み,例題を解いておくこと.

はじめて学ぶ化学

はじめて学ぶ化学